日銀介入による円売りは円高を止めれるか
対日資金流入フローはリバーシブル
2008年に深刻化した金融危機後の円高傾向の背景となっている国際資金フローを確認するため、本邦国際収支統計中、実際に為替需給に影響をもたらす可能性が高いフローを抽出するのが有益だろう。 経常収支項目では、貿易・サービス収支および所得収支を見る。所得収支黒字は近年拡大傾向にあり、特に最近では本邦経常黒字の大半を所得黒字が占めている。
しかし、かつて所得収支、特に債券クーポンに関連する黒字部分について、例えば米国債投資の場合だとクーポン収入の本邦投資家の受取は統計上所得収支の黒字として計上されるものの、ドル建て預金に滞留した後米国債に再投資されることが多く、円買い需要には繋かっていない場合が多かったとみられる。
もっとも、最近の円高傾向の中では所得収支黒字項目が実際に円買いに繋がっているヶ−スが多くなっている可能性が高い。資本収支項目では、長期性資金である直接投資収支に加えて、証券投資収支のうち対外投資について、為替ヘッジ比率が高いとみられる生命保険会社および銀行を除き、年金基金による投資を反映する信託勘定や、個人投資家による投資を反映する証券会社および投信会社分を用いる。
対日短期債投資、所得収支黒字および短期貸借が円高に寄与してきた可能性
これらを個別にみると海外投資家による対日短期債券投資および所得収支黒字が特に2010年以降で大きな対日流人項目となっている一方、個人投資家による対外投資や直接投資収支は継続的な対外流出項目となっている。他方貿易・サービス収支や対剛朱式・中長期債投資は、2011年後半以降は対外流出に転じてきている。
円高傾向継続の中で、本邦企業の対外M&A増加とその円安魏果への期待が高まっており、実際9月分、11月分の直接投資収支は各々1.87兆円、1.27兆円の流出超と所得黒字額を上回った。本邦直接投資収支はここ数年流出傾向であり、増加は単発的に留まることが多く、今後の増加継続は不透明だが、所得黒字規模を持続的に上回ると円安圧力となるため注目されよう。
これらを合計して2008年以降の累積ベースでみると、2009年中までは海外投資家による対剛朱式・中長期債投資の売り越し(リパトリェーション)が優勢となりネットで対外流出が続いたものの、2010年以降はこれら項目もネット流入超に転じており、資金フロー面でも円高圧力の高まりが窺われる。
また、国際収支統計中、実際のフローが見えにくい「その他投資」関連項目でも、円キャリー取引の円調達に関連するとみられる短期貸出・借入の項目を累積ベースでみると、長期的に円名目実効相場との連動性が非常に高い。
ユーロ円相場での介入が焦点
円高とともに観測される対日資金流入は、対日短期債投資、対日借入の巻き戻しや所得収支黒字が中心だが、大半は円高期待によりもたらされている側面もあり、円相場の方向性次第で反転し得るものといえる。海外投資家による短期債投資は、利回りにさほど魅力がない中で円高を背景とした資金流入の短期的運用である可能性があるほか、所得収支黒字分の円転についても、円高基調が一服あるいは反転すれば、対外再投資需要の高まりにより波少ヽしよう。
本邦当局による巨額円売り介入はこうした投機的側面がある資金流入に対抗したものとみることができ、こうした円高阻止努力の効果は、11月以降の資金フローを変化させたかどうかでまずは判断できよう。ファンダメンタルズ要因がフロー面での円高圧力を反転させるまでは、本邦当局の円高阻止努力が続けられる可能性も示唆される。
当社は2012年には、円は対ドルで下落するとみており、ドル/円相場での巨額円売り介入の必要性は低下するとみているが、円は対ユーロで年末にかけ96円へ下落し、さらなる下振れリスクもあるとみている。こうした中、ユーロ円相場での介入の可能性が焦点となってこよう。
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